さて、秋の気配が感じられるようになった10月の最後の土曜日に、産業カウンセラー養成講座の最後の講習が行われ、午後には7ヵ月にわたった講座の閉講式が開催された。高額の学費を支払いながら、わずか2~3回の講座に出席しただけで去って行った受講者や、転勤などにより通学できなくなった受講生も少なくなかったようである。迷宮に迷い込んで、精神科医に通う羽目に陥る受講生も少なくないそうだが、無理からぬことだと思う。
それでも、終わってみれば無遅刻・無欠席の皆勤賞だったが、何をやってきたのか振り返ってみても、記憶はほとんど残っていなかった。ただただ時間と労力と金を無駄にしたという思いだけが残った。得たものと言えば、養成講座の修了証という名の切り紙1枚だけである。
しかし、いにしえの剣術道場で師から与えられる切り紙とは異なり、大した意味があるわけではない。修了証といっても、有り体に言えば、産業カウンセラー試験の受験料の9割は支払済みであるという証明でしかないとも言える。「養成講座を無事修了しました。産業カウンセラーとして認定します」という認定証ではないのである。
実は、養成講座の終了後、2週間ほどすると1通の葉書が舞い込んでくる。実技能力が不十分だから、産業カウンセラー試験は免除になりませんという通知である。「あなたは産業カウンセラーとして認定できるだけの能力は有していないので、2ヵ月後に認定試験を受けてください」というわけである。しかも、高額の受講料に受験料は含まれていないそうで、別途、これまた異様に高額の受験料を支払わなければならない。つまり、本来なら受験の必要はない試験を受けるわけだから、追加料金が発生することになる。いよいよ資格商法に引っかかったと感じる受講生は多いのではないかと思われ、受験料の額を聴いただけで受験するのを止める受講生もいるようである。
しかし、これは実に奇妙なことである。養成講座の受講生は、7ヵ月間にわたって土曜日の朝から晩まで模擬カウンセリングを繰り返してきた。にもかかわらず、産業カウンセラーになれるだけの技能を身に付けていないとすると、その間、講師たちは一体何をしていたのかということになるだろう。どのみち「あなたは産業カウンセラーとして認定できるだけの能力を有していません。試験を受けてください」と宣告して終わりなら、誰でも講師を務めることができる。ところが、能力を身に着けさせないまま修了証を付与し、「2ヵ月後に試験を受けてください」である。ふざけた話だと思うのは私だけではないだろう。
そもそも、7ヵ月にもわたって訓練を受けても合格レベルに達しなかった受講生が、その後2ヵ月余が経過すると合格レベルに達するというのは荒唐無稽な話である。その期間は学科試験の勉強に専念することになるだろうし、模擬カウンセリングをして訓練を積むことは極めて困難である。自分がクライアント役になるのなら、犬にでもカウンセラー役を任せればよいだろうが、自分がカウンセラー役になるときに、クライアント役を見つけるのは容易なことではないだろう。どんなに賢い犬でも人間の言葉は喋れないから、クライアント役は務まらないのである。
結局、7ヵ月間教わったことをすっかり忘れた頃に受験することになるのだから、普通に考えたら合格するはずがない。それで合格するなら、そもそも試験を受けろとは言われないはずである。要するに、試験は高額な受験料を支払わせるための方便ではないかとさえ思える。そして、当然のように不合格にして、「来年また受験してください」となる筋書きだろう。つくづく金儲け主義に徹した協会なのである。さしずめ、受講生(受験生)が葱を背負った鴨に見えているに違いない。
もっとも、受験生全員を不合格にしたのでは詐欺まがいの商法がばれるから、一定割合は合格させなければならないだろう。しかし、2ヵ月余の間にカウンセリングの場数をこなし、実力を飛躍的に向上させる受験生など皆無だろうから、やはり試験の合格者がいるというのは胡散臭い。仕方なく一定割合を合格にしたのでなければ、もともと合格レベルに達していた受講生に受験料を支払わせるために、敢えて受験させていると見るべきではないだろうか。
時間と労力と金を注ぎ込んだ産業カウンセラー養成講座だったが、この時点で、私は受験する意欲を全く失っていた。今まで、行政書士・宅地建物取引主任者・個人情報保護士、証券内部管理責任者などの資格を取得し、その他もろもろの検定に合格してきたが、ここまでモチベーションが上がらない試験は初めてで、「これ以上、葱鴨にされてたまるか」という心境になっていたのである。
また、産業カウンセラー試験に関しては、信じがたいような裏話が伝わっている。現役のカウンセラーから直接聴いた話では、受講生同士の間で優秀だと目されるような受講生、当然試験は免除になるだろうと思われる受講生は、間違いなく試験が免除されることはないそうだ。むしろ、絶対に試験免除にならないと目されている人たちばかりが免除になるというのである。もっとも、女性は大抵の受講生が免除になるらしい。特に美女は間違いなく免除だという話もある。その話を聴いたときは「まさか・・・・・」と思ったが、火のない所に煙は立たないもので、産業カウンセラー養成講座(協会?)の闇は相当に深いようなのである。
(続く)
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